独立して自分一人で仕事をするようになってからもう6年が経ちました。思い返せば本当に早いものです。最初は本当に手探り状態で来月はどうなるだろうという状態でしたが、3年目あたりからやっと自分の仕事というものが出来るようになってきたかなと感じています。今回は自分のそんな経験も振り返りつつ、SE(システムエンジニア)が独立して仕事をする上で必要なこと、大事なことを書いてみたいと思います。
●差別化された技術、ノウハウ
同じことをしている同業他社の中からお客様があえて自分を選ぶからには、選んでもらうだけの理由付けが必要です。それが差別化です。ただ日本で唯一とか世界で自分だけというほどの差別化までは必要なく、この地域内では自分のところが一番という程度の差別化でも十分やって行かれることが多いです。営業力や人間関係も差別化のひとつにはなりますが、それだけでは駄目です。技術力が劣っているようでは、営業力や人間関係だけでカバーするのにも限界があります。
参考までに私の強みのひとつは、Macintoshに強くかつWindowsにも強いと言う点があります。Macに強い業者は他にもいますし(ただしその数はシェアに比例して相当少ないです。なぜならMacだけでは食っていけないという厳しい現実があるからです。)、Windowsに強い業者も沢山います。ただその両方に同じハイレベルで対応出来る業者というのは、国内でも相当数が少ないはずです。なぜならWindowsをメインでされている業者はWindowsだけで十分食っていけますので、同じくらい手間がかかって仕事は10分の1も無いMacまであえて手を出さないからです。またMacに強い人は、Windowsをなぜか嫌う傾向があるのです(^^;。
●営業力
技術者はつい技術面ばかりに気を取られてしまいがちですが、技術力と並んで重要なのがその技術を売り込んで仕事を取ってくる営業力です。先に差別化された技術力が必要と書きましたが、でも技術力がどんなにあったとしても営業力が全く無ければ、その技術力を生かして仕事を獲得することは難しいです。
ただ技術者は一般的に営業は苦手としていることが多いです。私の場合も、かつては営業はかなり苦手な方でした。でも以前勤めていた会社でいやいやながらも営業をさせられたことが、独立してから大きな力になりました。なぜなら営業力というのは頭で覚えるものというよりは、経験して身に付く部分が大きいからです。
もしどうしても営業が苦手だという人は、営業を得意とする人と組むのが良いかもしれません。
●資金繰り
独立する際には少なくともその後1年間の資金繰りの計画表を立てるはずですが、多くの場合は間違いなく予定より支出は増え収入は少なくなってしまいがちです。正直なところ、当初予定した収入の半分でも到達することが出来ればまだ良い方だと思います。自分で計画を立てると、それほど希望に満ちた甘い計画を立ててしまうものなのです。私もそうでした。独立して最低半年は無収入であることを前提にした方がいいです。
また資金繰り面でも、最低2ヶ月は入金が無くてもやって行かれるだけのお金は常に必要です。特に企業相手の仕事の場合は、仕事が終えたその瞬間にお金をいただけるということはまず無くて、締めの関係で支払いは1ヶ月ほど遅れるのが普通です。例えば100万円の仕事をしたけれど入金が来月となると、仕事をした月および来月入金があるまでは手持ちのお金でやりくりしなくてはなりませんから。
私も資金繰りには相当に苦労しました。特に大きな仕事で何百万の単位になると、その入金がいつあるかで本当に死活問題となります。
また中にはうちは基本的に6ヶ月手形なんですよという会社もありました。手形、手形割引とはどういう意味かを知ったのもその時でした。手形割引って、てっきり手数料さえ払えば銀行で簡単に現金化出来ると思っていた私は世間知らずでした。
●リスク分散
上の資金繰りの項目にも関連することですが、仕事を受注する上でリスク分散ということも意識した方が良いです。どういうことかというと、特定の1社に仕事を全部依存していると、その会社の景気動向の影響をもろに受けてしまいますし、最悪その会社が倒産してしまったら一緒に首をくくる状況に追い込まれかねません。
特定の会社に仕事を全面的に依存するのは営業的には楽かもしれませんが、それに伴う上記のようなリスクを考えると、やはり出来るだけ仕事は複数の会社から受注するようにすることが必要だと思います。
●絶え間ない向上心を持ち続けられるかどうか
自分一人で仕事をしていると、ついつい自分の管理にルーズになってしまいがちです。そして今の仕事をこなすだけで精一杯という状況が続くことも多いでしょう。でも常に次のステージへ向けての自分への投資を怠らないことです。なぜなら自分で仕事をしているということは、自分だけが資本だからです。
収入と時間の2割は自分への投資に使えという話が先日読んだ「ITエンジニアが独立して成功する本」に載っていましたが、私もまさにその通りだと思います。私も平均すれば1日4時間以上の勉強(マニュアルを読んだり資格の勉強をしたりIT系の雑誌を読んだりビジネス書を読んだりなど)と、それに伴う相応の購入費等の出費をしています。1日は24時間あります。睡眠や食事等必要最低限の時間を8時間としてもまだ16時間残っています。12時間仕事をしてもあと4時間は勉強出来るのです。
また他社と差別化するためにも、人に負けない勉強や研究は欠かせません。というか勉強を仕方なしにやるようでは、その時点であなたはその仕事に向いていないと言わざるを得ません。
●その仕事が好きかどうか
絶え間ない向上心を持ち続けられるかどうかは、その仕事が好きかどうかということでもあります。その仕事をお金を得るための手段としてだけでやっているのか、それともそれが心から好きだからやっているのか。同じ仕事をしていても、ここで道は大きく分かれます。(最低限、やらされているという気持ちを自分からやっているという気持ちに切り換えるだけで、そうとう変わってきます)
ぜひ自分が好きなことを仕事にしましょう。そうすれば仕事のために勉強したり苦労したりすることは苦でなくなります(^^)。
もしかするとこれが仕事をする上で一番大事なことかもしれません。