今回の危機一髪はカヌー編として書いてみたいと思います。
カヌーでは何度も危ない目に遭っていますのでこの手の話題に事欠きませんが(^^;、でも今でも強く印象に残っているのはスラローム艇で初めて出かけた梓川での出来事です。
まだカヌーを始めて2、3年目の頃でした。それまでカナディアンカヌー、ファルトボートと比較的安定性の高いフネにのってきたのですが、だんだんと激流にもがんがん突っ込んで行く事の出来るスラローム艇にも乗りたくなり、「ダンサー」というスラローム艇をとうとう買ってしまいました。
そして2、3回ほど湖の静水で練習したのち、いよいよ瀬のある川に初チャレンジということで出かけたのが梓川でした。梓川は以前にも1回だけカナディアンで下った事があるですが、その時はこの川がこんなに浅くて瀬があるとは知らず、カナディアンの底を石にがんがんぶつけてしまい、すっかりぼろぼろにしたのでした(^^;
今回はそれ以来2回目、単独行です。
梓川ですが、川幅は5mほど、上流が上高地だけあってきれいなよく澄んだ気持ちよい川です。20mから30mごとにちょっとした瀬がありますが、でもそんなに激流というほどではなく、時々出現するテトラさえ注意すればそんなに危険はありません。
下り始めた直後は、スラローム艇という不安定なフネで下るのは初めてゆえかなり緊張していましたが、だんだんとなれてきて梓川の気持ちよい瀬で遊べるゆとりも出てきました。
事件はそんな気持ちがゆるんでいる時に突然起こりました。
一つの瀬を過ぎて瀞場にさしかかった時、何ともないところで突然フネがくるっと転覆してしまったのです。まあカヌーが転覆するのは良くある事でそれ自体は特に危険と言う事ではないのですが、その時はスラローム艇で川で転覆したのは初めての経験だった為に気持ちがすっかり動転してしまい、慌てて息をしようと体を起こそうとしたのですが、下半身はスラローム艇の中にしっかりとはまっていて、水面まで顔が上がりません。そして両手でカヌーから体を出そうとしても全然抜けてくれないのです。
そんなこんなでパニックの中、20、30秒ほど水中でもがいていたでしょうか。ああ、今回こそはもうダメかも知れないと弱気になり、ふと頭の中に土左衛門となって川を流れていく自分の姿がはっきりと浮かんできたのです。こんな事で自分が死んでしまうなんて情けない...
と、その瞬間です。体が抜けない原因が分かったのは。
スラローム艇の場合、カヌーの中に水が入らない様にスプレースカートと言うものを取り付けていて、それがある為に体がカヌーから抜けなかったのです。
さっそくぴっちりはまっていたスプレースカートを手で外し、カヌーの中から体を抜いてやっとのこと息をする事が出来ました。
さて次にカヌーで一番びっくりした思い出を書いてみたいと思います。
秋の千曲川をカナディアンカヌーに乗って一人でのんびりと下っていた時の事です。
ちょうど小布施の辺りにさしかかった頃だと思います。天気は曇りで、川幅も広く流れもほとんど無く、水面にはところどころで大きな渦も出来ていたりして、ちょっと不気味なほど静かでした。何か出てきそうな、そんな雰囲気さえ漂っていました。
その時です。いきなりカヌーの前方5mほどで水面が大きく盛り上がったのは。
ざぶーん!
もう私は腰をぬかさんばかりにびっくりしましたね。
それは水面から3〜4mほどは立ち上がったでしょうか。 そしてその次の瞬間、それは再び水の中に戻り、再び川は何事もなかったかの様に、それまでの不気味なほど静かな状態に戻っていったのです。
さて、それはいったい何だったのか。
実は流木だったのです。台風などで流されてきた木が多分その辺りの川底に引っかかり、偶然水流に押されてまっすぐに立ち上がり、そしてそのまま反対側に倒れていったものと思われます。