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[2001/06/11] 私がカヌーを始めた頃

 もう15年ほど前になるでしょうか。
 当時、ちょうど私が少しずつアウトドアにはまりかけていた頃で、アウトドア雑誌の「ビーパル」にカヌーの特集が載っているのを見て、思わずカヌーを衝動買いしてしまったのが私がカヌーを始めるきっかけでした。 雑誌や本でいろいろと調べて、のんびり川下りを楽しむならオープンタイプのカヌーが良さそうということでカナディアンカヌー(ボートのようにオープンタイプのカヌー)を買ったのですが、もちろん最初はカナディアンで下れる限度というものを知りません。近くの諏訪湖で軽く1回乗った後に目指したのは、松本の梓川から犀川にかけての約20kmの川下り。
  今思い出してもこれは無茶なチャレンジでした。

  友人のTと二人で下ったのですが、梓川は水量の少ない瀬の多い川で、下る間中ほとんどカヌーの底は川底の石にあたっていました。案の定、間もなく底がひび割れして浸水が始まり、仕方なし途中で近くの民家までガムテープを借りに行って、それで応急処置をした後再び下り始めました。そこでツアーを中止しようと言う意識よりは、とにかく車を置いてある下流の場所まで下らないと帰れないという思いの方が強かったような気がします。
  夕方、だんだんと暗くなってきてもまだ目的地に到着出来ず、徐々にその悲劇的なクライマックスに近づいていきます。初めて下る川ゆえ、あとどれくらい下れば着くかも分からず、ただただ心細くなりながらもひたすら流れに任せて下っていたのですが、川はいくつも支流を集めて水量もかなり増えてきており、そんな強い流れの中に大きなうねりの様な波のある部分があって運悪くカヌーはそこに突っ込んでしまい、カヌーはざぶんざぶんと波をかぶって水がカヌーの中に大量に入ってしまい、こうなるとカヌーはバランスがほとんど取れなくなり、間もなくカヌーは転覆。(ちなみにカナディアンで転覆したのはそれ以降も含めてこの時だけです)
  ライフジャケットをつけているので沈むことは無いのですが、ただ強い流れの中で転覆したカヌーをつかんでだんだんと岸に寄せていくのは並大抵のことではありませんでした。ましてほとんど暗い川の上です。どれくらい流されたか分かりませんが、やっと岸の近くの足が着く所まで来られたときは本当にほっとしました。
  でもそこがいったいどこかも全然分からず、とりあえず岸に上がって道らしき所をずぶぬれのまま歩いていき、しばらくして通行量の多い道にやっと出られた時、ああこれで今日は帰れるなとほっとしたのですが、それもつかの間、そこから車を置いてある下流までまだ相当歩かなくてはいけないことが分かってふたたびがっかり。ずぶぬれのまま国道の歩道を二人でとぼとぼと1時間ほど歩き続けました。

 そんなことがあって、またカヌーツアーしようよとTを誘ってもなかなか話にのってきてくれなかったのですが、その翌年のゴールデンウイークに千曲川を上田の辺りから飯山まで約60kmを4泊5日くらいかけてのんびり下ろうというツアーを計画。これにはTもやっとしぶしぶながら同行してくれることになりました。
  ちなみにカナディアンカヌーでのツアーは、もし途中で何らかの事情でカヌーを運ばなければならなくなったときなど、一人ではどうしようもない場合も考えられますし、また車も2台あった方が便利と言うこともあって、仲間を誘って行くことが多いです。
  さてカヌーに乗るのは昨年秋に犀川で転覆して以来、ひさしぶりです。本格的な泊まりでのツーリングもこれが初めてでした。
  もちろん千曲川を下るのもこれが初めてで心配も多かったのですが、川自体は昨年下った梓川・犀川に比べると川幅も広く流れもおだやかで、カナディアンで下るのにはまさにうってつけの川だと思いました。 カヌーはキャンプ道具にビールで満載状態。 途中で食料を買い出しに行ったり、近くの民家にポリタンクで水を分けてもらいに行ったり、薪を拾ってきては飯ごう炊飯でご飯を炊いたりと、川を下っている時間よりはそう言うことをしている時間の方がはるかに長かったですが、でもやることすべてが新鮮でわくわくしました。
  これが私にとっての初めての本格的な冒険と言ってもいいでしょう。
  川を下っていても、下流の方からざーっという瀬の音がちょっとでもしてくると心配になって、岸に上がって下流を偵察に行くこと数知れず。やはり初めての川は慎重になります。(2回目以降は危険個所も大体分かってくるので、そこ以外では下見せずに突っ込んでしまうようになりますが)
  でも千曲川はそんな気を抜けないところばかりでなく、大部分はゆったりとおだやかに流れていて、カヌーの上でビールを片手に寝ころんで、時を忘れて周りの景色をぼーっと眺めていても大丈夫なほど。千曲川はこののんびり出来るところが一番気に入っていまして、今も毎年出かけています。 また長野盆地内では川原が広いのも特徴で、両岸を走る道路の間隔が数kmほど離れている事もあるほどです。ある橋のふもとにカヌーをつけて買い出しに行こうとしたら、町はここから3kmほどこのジャングルの中を歩かないと着かないよと、偶然近くにいた人に言われてびっくりしたのを覚えています。
  さてそんなゆったりした流れも飯山近くの渓谷地帯に入ると様子も一変し、川は波の高い瀬と瀞場を繰り返して流れるようになります。千曲川の瀬は波高50cmからあっても1mで、注意すればそう危険ではないのですが、この最初の時はもうびびりまくりでした。
  白く泡立つ流れが100mから200mも続き、ここで転覆したらカヌーが壊れ荷物は流出してツアーは中止になるどころか自分の命すら危ないという恐怖が先に立ち、Tとも相談してとにかく無茶はしないでここはおとなしく岸を曳いていこうということに決定。 ただ両側が崖の部分があったりと、カヌーを曳いて岸を歩いていくのにもそうとう苦労しました。今なら下見せずに行くならこの渓谷地帯を1時間もあれば余裕で通過してしまうのでしょうが、その時は丸1日ほどかかったような気がします。
  そしてやっとの思いで渓谷地帯を脱出し、いよいよ最終目的地の飯山盆地にはいります。
  ここまで来るとゴールデンウイーク頃だとまだ雪で真っ白に覆われた山々が目の前に広がり、ああ雪国にきたんだなあという旅の感傷と共にその景色が強烈に心に焼き付けられました。

 こうしてカヌーの初めての本格的なツアーも無事終了し、カヌーや荷物を車に積み込んで帰途についたのですが、自宅に帰ってきてすぐ、ある妙な感じがするのに気づきました。それは数日間は抜けず、ゴールデンウイーク明けの職場で会ったTにも聞いてみたのですが、やはりTも同じ様な感覚を感じたとの事。
  その感覚とは...
  今まで数日間、確かにカヌーで冒険をしてきたのに、再びいわゆる日常生活に戻ってみると、それまでのカヌーで過ごした日々が心の中の時間の流れの中でぽっかりと切り離されてしまって、まるで別な世界の出来事の様に感じられてしまうとでも表現したらいいでしょうか。それは今まで感じたことのない不思議な感覚で、ただそれ以降何度もカヌーツアーやその他のアウトドアをしても同じ様な感覚はもう2度と感じることはありませんでした。
  時間の流れというものは、もしかすると日常生活の中と冒険に満ちたアウトドアの中では流れ方が全く違っているのかもしれません。